【第一議論後・第二議論前】
(このシートは、第二議論の直前に読むものです)
7人はひどく困惑していた。江波氏の死因について、会話がおそろしい程かみあわないのだ。
ある者は「刺殺」といい、またある者は「撲殺」「複雑骨折」「大やけど」……てんで話にならなかった。――瞬間、砂漠の強い日差しに照らされ、7人は強い立ちくらみに襲われた。視界が真っ白になり、脳裏をさまざまなイメージが、走馬灯のようにかけめぐる――。
【江波の死:刺殺の場合】
【RP ウッドベル ヘンテーコ博士】
ウッドベル氏は少し苛立ちながら、パイロット用控え室に向かっていた。副操縦士の江波が、いつまでも帰ってこないのに、しびれを切らしたのだ。
パイロット用の控え室は、ラウンジを横切って、エコノミー席の近くにある。
ラウンジの時計をちらと見ると、16時を指していた。
ウッドベル「江波? 江波くん、いるかい? もう、休憩は終わりだぞ!」
控え室の扉を開け、なかに入ったとき、彼は信じられないものを見た。
江波氏が死んでいたのだ。
ウッドベル(どういうことだ……誰が殺した? とにかく、緊急事態だ。医者を呼ばなくては!)
ウッドベル氏はそばにいた添乗員を捕まえ、事情を打ち明けた……
◆◆◆
ほどなくして、ヘンテーコ博士が来てくれた。
博士「何があったんじゃね、ウッドベルさん!」
ウッドベル「副操縦士が、シャワールームで倒れていたんです! 何があったのか……」
博士「わしは医者じゃ。任せなさい、少し様子を見てみよう」
……それから博士が周りを調べると、次のようなことがわかった。
被害者は、副操縦士の江波承太郎氏。パイロット用控え室で亡くなっていた。機長室を出たきり戻らず、心配したウッドベル氏が見に行ったところ、シャワールームのバスタブに倒れていたのだ。
博士「江波副操縦士は、武器のようなもので刺されたようじゃ……凶器が何かはわかっておらんがの。
わしとしては、彼の体の傷跡が気になる。傷の位置と向きを見るに、犯人が右利きであることは明らかじゃ。それから、刺し傷がいくつもできている。相当恨みを買っていたのかもしれん……誰が、何のために?」
不思議に思い、博士は首をかしげた。
V容疑者は次の7人だ。
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ヘンテーコ博士
-
ウッドベル氏
-
鈴木 涼音
-
ミーナ(涼音の娘)
-
美波
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龍聖
-
桜
このなかから、江波を殺したのは誰なのかつきとめなければならなかった……
【江波の死:撲殺の場合】
……そして、江波の殺害にまつわる記憶は、もうひとつあった。
◆◆◆
ウッドベル氏は少し苛立ちながら、パイロット用控え室に向かっていた。副操縦士の江波が、いつまでも帰ってこないのに、しびれを切らしたのだ。
パイロット用の控え室は、ラウンジを横切って、エコノミー席の近くにある。
ラウンジの時計をちらと見ると、16時を指していた。
ウッドベル「江波? 江波くん、いるかい? もう、休憩は終わりだぞ!」
控え室の扉を開け、なかに入ったとき、彼は信じられないものを見た。
江波氏が死んでいたのだ。
ウッドベル(どういうことだ……誰が殺した? とにかく、緊急事態だ。医者を呼ばなくては!)
ウッドベル氏はそばにいた添乗員を捕まえ、事情を打ち明けた……
◆◆◆
ほどなくして、ヘンテーコ博士が来てくれた。
博士「何があったんじゃね、ウッドベルさん!」
ウッドベル「副操縦士が、シャワールームで倒れていたんです! 何があったのか……」
博士「わしは医者じゃ。任せなさい、少し様子を見てみよう」
……それから博士が周りを調べると、次のようなことがわかった。
被害者は、副操縦士の江波承太郎氏。パイロット用控え室で亡くなっていた。機長室を出たきり戻らず、心配したウッドベル氏が見に行ったところ、シャワールームのバスタブに倒れていたのだ。
博士「江波副操縦士は、鈍器のようなもので殴られて死んだようじゃ……凶器が何かはわかっておらんがの。やけにねばついた彼の口元も、気になる。
しかし……このぬれた床はなんじゃ? シャワーでも入ったのか? それにしては、バスタブの中がぬれていないが……」
不思議に思い、博士は首をかしげた。容疑者は次の7人だ。
-
ヘンテーコ博士
-
ウッドベル氏
-
鈴木 涼音
-
ミーナ(涼音の娘)
-
美波
-
龍聖
-
桜
このなかから、江波を殺したのは誰なのか、つきとめなければならなかった……
【江波の死:飛行機事故の場合】
【RP 全キャラクター】
……そして最後に、飛行機事故の記憶。
◆◆◆
ウィーン! ウィィーン!
ブザーのような警告音が響く。
アナウンス『皆さま、ただいま飛行機が緊急降下中です……』
落ち着いた女性の声で、アナウンスが流れはじめる。窓の外からは、飛行機の翼が、炎を上げて落ちていくのが見えた。
アナウンス『頭上のマスクを強く引き、鼻と口に合わせ当て、ゴムバンドを頭に付けてください。お子様のマスクも、しっかりと付けてください。安全のため、シートベルトは緩みがないよう、しっかりとお締めください。衝撃に備えた姿勢を取り、お立ちになりませんようお願いいたします……』
救命マスクをつけ、壁で頭を打ちそうになりながら、乗客たちはその場で身をかがめる。
――一瞬、体がふっと宙に浮く。次の瞬間、重力が体を引っぱる、ものすごい感覚に襲われる。機内には乗客の悲痛な声が響く――。
◆◆◆
飛行機は砂漠に不時着したが、奇跡的に一命を取り留めたのは、たった8人だった。
桜「龍聖! 龍聖、おい、無事か?」
大破した機内。気を失っている龍聖に、桜は声をかけつづける。個室の壊れた扉から、龍聖が倒れているのを見たのだ。
龍聖「桜! 助けに来てくれたのか……ケガはないかい?」
あぁ、良かった、目を覚ました。俺は心のなかだけで、ほっとため息をつく。
桜「お前の体なら、見たところどこも外傷はないよ。立てるか?」
龍聖「そうじゃなくて、きみのほうだよ。ズボンのすそが、破れてるけど……」
桜「問題ないさ。飛行機の部品にひっかけただけだ。ほかに生存者がいないか、見に行こう」
2人は大破した機内に、誰か生存者がいないか探しにいくことにした。機内のありさまはひどいもので、倒れている人、四肢や首の変な方向に曲がった人もいる。
桜「龍聖、ラウンジから、人の声がするぞ! 生存者かもしれない!」
ひしゃげてドアの外れた入り口から見れば、ラウンジでは美波が力なく体を丸めている。
桜「あぁ、こっちにも生存者確認……美波さん、大丈夫ですか、動けますか?」
桜はラウンジに入り、美波に優しく語りかけた。彼女は何も返事をしない。
桜「怖くてしゃべれないのか……。今助けますからね、美波さん。立てそうですか?」
彼女はゆるゆると首を振った。体に力が入らず、うまく動かないようだ。
桜「おい、龍聖。お前も手伝え。向こうに機長さんたちが待っている。そこまで美波さんを運ぶんだ」
龍聖「えぇ? ――わかったよ、やるよ。あんまり、力仕事は得意じゃないんだけどな」
美波のことは龍聖に任せ、桜は外に出て、別の生存者を探すことにした。
◆◆◆
折れた翼の陰には、もう涼音とミーナの親子、それにウッドベル氏がいる。開けた場所に集まり、救援を待つつもりのようだ。
龍聖「あっ、機長さん! 良かった、これで安心だ……おーい、僕たちもここにいます!」
龍聖が、3人の姿を見とめて手を振った。ミーナは嬉しそうに笑った。親がついているとはいえ、砂漠に放り出され、不安だったのだろう。
涼音「龍聖さんたち、ほかに無事な人がいないか、見てまわるんですって。桜さんが先に行ったらしいわ。良かったわね、ミーナ。たくさんの人で固まって過ごせば、少し安心できるわ」
ミーナ「うん、リューセーおにいさんも、オウにいさんもいてよかった! ……そうだ、ミナミねえさんは?」
龍聖「ここにいるよ、僕が連れてきた。脚をくじいたみたいなんだ。涼音さん、見てあげてくれませんか」
涼音「ええ、わかりましたわ。美波さん、ゆっくりでいいから、こちらにお座りになって。私のショールを敷いたから、清潔よ」
……ほどなくして、副操縦士の江波が、そして桜とヘンテーコ博士がやってきた……
◆◆◆
博士「不幸中の幸いじゃ……不幸中の幸いじゃ……」
ヘンテーコ博士は、飛行機の壁に空いた穴から、はい出そうとしていた。あたりは見渡す限り、一面の砂漠だ。
桜「おや、ヘンテーコ博士! ご無事だったんですね! さぁ、こちらへ」
桜は博士の姿を見つけ、手を差しのべた。博士も桜も、小さな傷こそできているものの、行動に支障はなさそうだ。
博士「やれやれ、助かったわい……ここはどこじゃね? ほかの生存者はいるのかな?」
桜「はい、俺と博士を含めれば、8人です。あとは重傷者や、意識が戻らない方ばかり。みなさん、向こうの日陰に集まっていますよ」
博士を連れて、折れた翼の陰に向かってみると、そこには既に6人が集まっている。見覚えのある乗客もいた。生きていたのは、こんなところだ……
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ヘンテーコ博士
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ウッドベル氏
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鈴木 涼音
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ミーナ(涼音の娘)
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美波
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龍聖
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桜
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江波承太郎
ひとまず、8人だけでも生きていて、みんなはほっとした。特にパイロットの江波とウッドベル氏が生きていたことは、大きな安心感につながった。
さて、こうして生存者が見つかったのは幸いだが、助かったというには早すぎる。この砂漠を抜けなければ、どっちみち8人は死んでしまうのだ。
まずは砂漠周辺に、オアシスや日陰になる場所がないか探さないといけない。
博士「念のため複数人で移動して、30分後に、飛行機墜落地点に集合するように」
ヘンテーコ博士はそう指示し、それぞれが四方八方に散っていった。そして30分後……
ミーナ「よーん、ごー、ろーく、なーな……あれ? ひとり、たりないよ?」
涼音「あら、江波さんはどこに行ったのかしら? まだ戻ってきていないわね」
龍聖「じゃ、僕と涼音さんとで探してこよう。皆はここで待っていてくれ」
2人は連れ立って江波を探しに行ったが……。
涼音「キャーッ!」
涼音の悲鳴。江波が死んでいたのだ。
死体は墜落現場から少し離れた場所で見つかった。その様子は奇妙なもので、一見、全身をやけどしたように見えるが、頭の後ろだけはきれいなままだった。おまけに、肩は脱臼していて、下半身は骨折していた。
龍聖「一体、何が起こっているんだ……! こんな短時間でこれほどの重傷を? 考えられない!」
生存者たちの間にも、どよめきが広がる。ヘンテーコ博士が生つばを飲みこんだ。上着のポケットから、なぞめいた機械を取り出す。
博士「この荒野に、進むべき道を切り開くのじゃ……!」
◆◆◆
◆◆◆
3つの記憶が頭をよぎり、これはどういうことだろう、とみんなは疑問に思っていた。
全て経験した出来事だったのである。それを自覚した7人は心臓が高鳴るのを感じた。自身の胸が熱くなっていく。目を瞑ると自分の心の中に他の自分がいることを感じた。そう別の世界線の自分である。
生存者たちは、一度自分の記憶を振り返り、自身と向き合うことにしたのだった……
◆◆◆
ここからは、15分間の第二議論フェイズになります。
別の世界の同じキャラクターを演じるプレイヤーどうしで、5人1組の卓をつくります。キャラクターによっては、出来事を振り返るためのシートを読むこともあります。